挨拶の素敵な俳優さんは?!
撮影所時代 (その7)
挨拶のことは前にも一寸触れたが、挨拶するにも姿勢の大切さを教えてくれたのが、二谷英明さんと芦川いづみさんだ。二谷さんはエイメイさんと親しみを込めて呼ばれていた俳優さんだが、その姿勢たるや、まさに紳士であった。
「お早うございます」と通路やステージの出入り口で声を掛けると、必ず丁重に頭を下げて「お早うございます」と挨拶が返ってきた。私のような下っ端のスタッフに対してもである。これは本当に嬉しかった。まだ若い私でも一人前として認めてくれているという気がしたのだ。
女優さんの中で感心したのは芦川いづみさんだ。通路ですれ違うときでも、声を掛けると必ず立ち止まって微笑みを浮かべ「お早うございます」と挨拶してくれるのが常であった。
ほとんどの女優さんは「お早うございます」と声をかけても、ちょこっと頭を下げて通り過ぎるか、返事だけはしても立ち止まろうとはしなかった。いづみちゃんのような人は稀であろうか。挨拶に心がこもっていると感じたのは、い
づみちゃんと小百合ちゃん位だろう。
いづみちゃんは現在、俳優の藤 竜也氏の夫人として銀幕を引退されているが、幸せな家庭を営まれているようだ。長生きしていつまでもお幸せであって欲しいと願っている。
いづみちゃんは私にとって宝になる思い出の人だ。どんな宝かいずれ書きたいと思っている。
或る日のお昼休み、私は所内を散策していた。するとボールがコロコロ転がってきた。軟式のボールだ。見ると小百合ちゃんと衣装部の青年がキャッチボールをしている。受け損ねた小百合ちゃんが「おねがいしま~す」と云った。ボールを拾い上げた私は「行くよ!」と答えて山なりのボールを投げ返した。見事にグ
ラブで受け取った彼女は「ストライク!」と叫んで、にっこり笑ってくれた。その笑顔の何とキュートだったことか。
まだ10代の頃の小百合ちゃんは活発な女の子だった。この当時は毎日のようにボール投げをしている二人の姿を見かけたものだ。昼休みの日課だったのかもしれない。他にスポーツをする施設も無かったからだろう。一時は撮影のための練習かとも思ったが、そうではなかった。余程、野球が好きだったのかも知れない。後にも先にもキャッチボールをしている女優さんなど小百合ちゃん以外にはお目にかからなかった。
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