日活の光と影 裕ちゃんの骨折と赤木の死
撮影所時代 (その11)
1961年(昭和36年)1月24日、裕次郎は志賀高原でスキー中、右足複雑骨折、4ヶ月の入院生活をおくることになった。日活に取ってはこの上ない打撃であった。スポーツマンの裕ちゃんのこと、単独で転倒したとは思えない。倒れていた女性にぶつかりそうになり、避けるために転倒したと聞いたような気もする。この方が心やさしい裕ちゃんらしい。
そしてそのショックも醒めやらぬ2月14日、今度は赤木がゴーカート試乗中に、ステージの鉄扉に衝突、約1週間死線を彷徨った末、21日に帰らぬ人となった。
まるで悪魔に魅入られたかのような悲劇の連続に、撮影所中、声もなかった。赤木の悲報を知った人々はみんな泣いた。私も赤木のために一掬の涙を流した。女優さんが食堂で泣き咽んでいるのも目撃したし、中でも通路ですれ違った小百合ちゃんやいづみちゃんの目が赤くなっていたのも見た。
食堂前から鉄扉まで直線距離にして凡そ50メートル余りあっただろうか。Tの字の先に激突したのだ。昔の事だけに勿論ヘルメットも着用していない。運悪く鉄扉の前でアクセルとブレーキを踏み間違えたのであろう。
相次ぐ衝撃にダイヤモンド・ラインは再編成を余儀なくされた。この大ピンチを9月まで裕次郎作品抜きで乗り切らねばならない。スタッフ、キャスト全員悲壮な決意を胸に秘めていた。
会社はバイ・プレイヤーの宍戸錠、二谷英明の二人を主演級に昇格させ、旭、浩治の4人で第二次ダイヤモンド・ラインを構築した。起死回生の妙薬になったのは錠さんの"稼業シリーズ”だったように思う。
夏の頃、裕ちゃんが松葉杖を一本ついて、右足に包帯を巻いた痛々しい姿でプロデューサー室に来るのを見かけたことがある。私が丁度部屋を出たときだ。
「ターキーさん、いる?」
「いませんが。部屋で待っていて下さい。お探しして来ますから」
「頼むよ」
そう答えてにっこり笑いかけてくれた。その時の笑顔が今も目に浮かんでくるようだ。水の江さんを探して伝言し、部屋に戻って裕ちゃんに報告したのを覚えている。裕ちゃんはリハビリの様子を首脳陣に報告にきたようだった。
9ヶ月間、裕次郎作品なしで乗り切らなければならなかった日活は、第2次ダイヤモンドとともに吉永、浅丘で女性路線を敷いた。また高橋英樹をデビューさせ、アクション映画の仲間入りをさせた。
だが、懸命のてこ入れにも関わらず、興行成績は次第に下降線をたどりはじめたようだ。
≪見ておきたい邦画≫
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