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超速人気作家 花登式台本執筆法とは???

         花登プロダクション時代 (その2)

花登さんの作品執筆法は余人の真似するところではない。私は何本も執筆をお手伝いさせてもらったが、私自身これは到底真似ることなど不可能だと思ったものだ。

舞台脚本の執筆に入る時は、花登さんから連絡が入る。「今夜7時、ホテルに来てくれ」と言われると、私はその時間にホテルの部屋に駆けつける。途中、薬屋に寄って、強壮剤のアンプルを箱で買っていくのである。ホテルはたいてい赤坂プリンスホテルの一室だった。

Photo 小机に向かい原稿用紙を拡げて私はスタンバイする。腹ばいになった花登さんが書き始める。ハコ書きなど見たことはない。メモすら見あたらない。シナリオを書いたことのある方ならご存知だろうが、1場面1場面のセリフや人物の動きなどをハコに書き込んでいく。それがないと前には進めないのが普通である。舞台脚本にしても芝居の大まかな流れを書いて、それを見ながら書くのが大方の執筆法であろうと思う。

ところが花登さんの書き方はそんなものを超越していた。白い原稿用紙を前にして、しばし黙考していたと思うと、いきなり書き出す。それも万年筆である。ハッハッと細かく息を吐きながらペンを動かすのだ。それがモーレツに早いのである。最初は面食らった。ぼんやりしているとアッという間に原稿が5枚、10枚と溜まっていく。私が1枚清書しているうちに3枚は書き終えている。手を休めるのは強壮剤をストローでチューチュー飲んでいる時だけなのだ。

まさに驚きを通り越して唖然、呆然としたものだ。花登さんが書き出した時には既に原稿は頭の中で完成しているのであろう。あとはそれを紙に写し出すだけの作業である。そうとでも思わなければ理解できない。本当に神業に近いと私は思ったものだ。凡人の私などが花登さんの書き方を真似しようものなら、支離滅裂なものが出来上がるに相違あるまい。

2時間程、夢中で書くと「ちょっと出かけてくる」と言って花登さんは中座して何処ともなく出かけていく。私はうず高く積まれた原稿を見ながら、黙々と清書に勤しむのだ。3:1のペースを2:1までもっていくのがやっとだった。何という速さなんだろう、只ただ感嘆するばかり、花登式執筆法なるものは、とても凡人が真似ることあたわずと教えられただけであった。

1時間ほどで花登さんは戻ってきて執筆再開する。そして、明け方には執筆完了する。強壮剤は10本は空になっている。こんな調子で仕事をして大丈夫だろうかと思ったものである。休む間もなく花登さんは清書した原稿に手を入れて行く。私が清書し終えるのとほとんど同時に直しも完了という訳だ。こうして舞台脚本は書き終わりとなる。

花登さんは舞台であろうが映画だろうが一つの作品を書き上げるのはほとんど1晩だった。そして書き上げた作品の舞台稽古が翌々日というケースも稀ではなかった。何しろ売れっ子の花登さんである。毎月、東京、大阪、名古屋のどこかで作・演出の芝居が待っていたのだ。

これは当に鬼気迫るとしか表現できない花登さんの執筆風景だった。

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